節税のために学ぼう!~事業所得2~
さて、前回は「事業所得」とはどういったものか、「自己否認」することによって経費にならなかった支出を経費にできる、という内容をご説明させていただきました。今回は具体的に節税対策を見ていきたいと思います。
まず、「事業所得」での申告を希望する場合には、所轄の税務署に「個人事業の開業届出書」を提出します。それが承認された場合、晴れて「個人事業主」になることができます。
そして!一番大きく節税ができるのが「開業当初」です。届出書が承認されて「個人事業主」になった時が「開業当初」にあたります。
この場合、事業を行うにあたりそれまでに準備として要した費用を「開業費」という経費にすることができます。開業までに一年以上時間を要した場合でも、その間に支出した開業に関係のある費用は「開業費」にすることができます。もちろん、先日簡単に触れました「減価償却資産」に該当するものはその年に全て経費にすることはできません。
簡単に計算例として見てみましょう。
開業のための下見に要した交通費 200,000円
開業のための消耗品等の購入費 300,000円
開業当初の売上高 20,000円
上記の場合ですと、「売上高20,000円-開業費500,000円=マイナス480,000円」となり、「開業当初」は480,000円の赤字となります。以前お伝えしましたとおり、「総合課税制度」の中に含まれる「給与所得」と「事業所得」は所得を合算して計算します。
サンプル税太くんが「事業所得」で「節税」した場合を見てみましょう。
サンプル税太くんの「給与所得」は「青②2,900,000円-緑③928,146円=1,971,854円」でした。ここでは「事業所得」と合算しますので、千円以下切捨てを行わずに計算します。
「給与所得1,971,854円-事業所得(赤字)480,000=1,491,854円→課税所得1,491,000円(千円未満切捨て)」となります。
所得税額を計算しますと、「課税所得1,491,000円×所得税率5%=74,550円→所得税額74,500円(百円未満切捨て)」
元々のサンプル税太くんの「課税所得」は1,971,000円、「所得税額」は黄④の99,600円です。
「99,600円-74,500円=25,100円」分の「所得税の節税」ができます。
また、「480,000円×住民税率10%=48,000円」分の「住民税の節税」ができます。
合計で73,100円の「節税」です。
つまり、独立や脱サラを考えていらっしゃるサラリーマンの方は、まず「個人事業主」になって「節税」を行ってから退職すべきなのです。
退職してから起業、ではなく「退職前に法律上で起業してしまう」ことで大きな節税になります。
しかし、多くの方が退職してから企業したり、週末起業を「雑所得」で申告されることが多いです。おそらくそれは、知らない分からないといったことだけでなく、「処理が煩雑になるから」という理由も大きいと思います。
次回はそれらを踏まえて、「個人事業主(事業所得での青色申告)のメリットとデメリット」をご説明できればと思います。
※上記の内容は、平成26年10月8日時点の法律に則って記載しております。
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