給与所得者の扶養控除等(異動)申告書はなぜ来年分(平成27年分)を書かされるの?
前回は「保険料控除申告書」を提出し忘れた場合について書かせていただきました。
今回は少し話は変わりますが、「なぜ平成27年分の扶養の紙を書くのかを詳しく教えてほしい」というご質問をいただきましたので、書かせていただきたいと思います。
今年(平成26年分)の年末調整なのに来年(平成27年分)の用紙?
お勤め先から年末調整の用紙が配られている頃だと思います。
もうすでに提出期限が終わっていらっしゃる方も多いでしょう。
その中で、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」だけ来年分(平成27年分)を渡された方もいらっしゃるでしょう。
本来であれば、今年分(平成26年分)と書かれた用紙が渡されるのでは?と不思議に思う方も多いようです。
実際に今年(平成26年分)の年末調整を行う際には今年分(平成26年分)の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を使います。
それなのになぜ、来年分(平成27年分)の用紙に記載させられるのでしょう。
お勤め先にはその年の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を保管する義務があります。
お勤め先は毎年雇っている人の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を保管しておかなければならない、という決まりがあります。
元々は架空人件費と呼ばれる、雇っていない架空の人間を雇っているかのようにしてお給料を支払っているように見せる方法で、脱税する人が多かったのです。
それを防ぐ意味もあり、「名前」や「住所」など、本人を特定できる資料の保管が義務付けられたのです。
そのため、一番最初に採用された時には年末調整でないにも関わらず、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を書かされているはずです。
そうやって、お勤め先は毎年1枚の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を保管しているのです。
年末調整で来年分(平成27年分)を書かせるのは怠慢?効率化?
上記の理由から、本来ならば、今年(平成26年分)の年末に「平成26年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を書いて、年末時点の扶養者の確認を行います。
そして、来年(平成27年)の年初に「平成27年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を書いて提出することが、正しい方法です。
しかし、この手続きを行うには、総務又は事務職員の負担が大きいのです。
年初に集めた今年分をその年の年末に、在職者だけ(退職者を除いて)に渡す必要があり、その管理が大変です。
そして、用紙を記載する私たちも、年末と年初に同じ内容を2度記載する必要があり、手間がかかります。
そのため、今年(平成26年分)の年末調整にも関わらず、来年分(平成27年分)の用紙に記載させることにより、平成26年末の扶養者の確認と、平成27年分の保管義務を同時に行っているところがあるのです。
事務手続きは効率化でき、私たちも記載が一度で済む。
きちんとしている勤め先はどうやっているの?
上記の内容を法律に則ってしっかりとされているお勤め先もあります。
そういったところは今年分(平成26年分)に変更がある場合は記載してくださいという「お勤め先独自の用紙」を作成されているケースが多いです。
他にはすでに「氏名」や「住所」が印字された用紙を配り、変更がある場合は赤ペンで訂正、ない場合は捨てて提出しない、といった方法を取られているところもあります。
どうしても来年分(平成27年分)を記載することに違和感を感じる方は、お勤め先にこういった提案をしてみてはいかがでしょうか。
※上記の内容は、平成26年11月20日時点の法律に則って記載しております。
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