103万円を超えても受けられる、配偶者特別控除ってなんだろう?
さて、前回の続きです。
今回は「配偶者特別控除」についてご説明させていただきたいと思いますが、その前に「保険料控除申告書」を簡単に知っていただく必要がございますので、そちらからご説明致します。
保険料控除申告書の正式名称って?
まず最初に、「保険料控除申告書」というのは、年末調整時期に渡されるぺらっとした紙切れ2枚の内の1枚です。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と一緒に渡されるもう1枚の紙です。
一般的には「生命保険料控除証明書」を添付して記載し、控除を受ける方が多いと思われます。
上記の「保険料控除申告書」の正式名称をご存知ですか?
「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」です。
あまり意識して見ていらっしゃる方は少ないかと思いますが、ぜひ一度お手元の用紙でご確認ください。
右上に小さく「保・配特」と書いてあります。国税庁が平成26年分をアップしましたので、実物を見てみましょう。
小さくて見えない場合はお手数ですが、コチラのPDF(国税庁HP)でご確認ください。
こちらの右3分の1ぐらいに記載欄があるのが、「配偶者特別控除」です。
配偶者特別控除ってなんだろう?
「扶養」という言葉で、「配偶者控除」を意識する方は多いと思います。
しかし、「配偶者特別控除」は意外と知られておりません。
簡単に申しますと、年収103万円を超えても、一部控除を認めますよという制度です。
前回お伝え致しましたとおり、「配偶者控除」は380,000円の所得控除を受けることができます。
「配偶者特別控除」は、控除額は段階的に減っていきますが、年収140万円までは控除を受けることができるのです。
控除額は以下を参考にしてください。
配偶者特別控除の控除額
配偶者の合計所得金額 | 配偶者特別控除の控除額 |
---|---|
38万円を超え40万円未満 | 38万円 |
40万円以上45万円未満 | 36万円 |
45万円以上50万円未満 | 31万円 |
50万円以上55万円未満 | 26万円 |
55万円以上60万円未満 | 21万円 |
60万円以上65万円未満 | 16万円 |
65万円以上70万円未満 | 11万円 |
70万円以上75万円未満 | 6万円 |
75万円以上76万円未満 | 3万円 |
76万円以上 | 0円 |
実際に計算してみよう!
実際に例を出して計算してみたいと思います。
サンプル税太くんの奥さんが、「お給料で年収118万円を稼いだ場合」で計算してみましょう。
年収118万円を上記の式に当てはめますと、
「年収1,180,000円-給与所得控除650,000円=所得530,000円」→「50万円以上55万円未満 26万円控除」です。
奥さんの税金を計算してみましょう。
「年収1,180,000円-給与所得控除650,000円-基礎控除380,000円=課税所得150,000円」
所得税「課税所得150,000円×所得税率5%=7,500円」
住民税「課税所得200,000円×住民税率10%=20,000円」(注:住民税の基礎控除は330,000円です)
となり、奥さんは合計27,500円の増税となります。
次にサンプル税太くんを見てみましょう。
もう「源泉徴収票」はいらないかもしれませんが、念のため。
前回ご説明致しましたとおり、サンプル税太くんが結婚した場合の計算は以下のとおりです。
「所得1,971,000円-配偶者控除380,000円=課税所得1,591,000円」
この配偶者控除が26万円に下がりますので、
「所得1,971,000円-配偶者特別控除260,000円=課税所得1,711,000円」
ですね。それでは増税額を計算してみましょう。
所得税「1,711,000円-1,591,000=120,000円」「120,000円×所得税率5%=6,000円」
住民税「120,000円×住民税率10%=12,000円」
となり、サンプル税太くんは合計18,000円の増税となります。
夫婦合わせますと「27,500円+18,000円=45,500円」の増税です。
手取りで見てみよう!
上記の内容だけ見ていますと、「45,500円」増税しただけのように見えますが、実際お手元に残るお金は当然増えます。
ギリギリ年収103万円稼いでいた場合と比較してみましょう。
「1,180,000円-1,030,000円-45,500円=104,500円」手取りが増加しています。
これを、「104,500円手取りが増えた」と考えるか、「45,500円分ただ働きだった」と思うかは皆さん次第ですが、簡単にまとめますと収入が増えない限りは使えるお金は増えません。
今回は118万円で計算してみましたが、107万円ですと合計14,000円の増税、26,000円の手取り増加です。
収入を増やして少し贅沢したり貯金に回すか、収入を増やさずに節約してやりくりするかは、人によって違うと思いますので、あくまで今回の計算は参考として頭に置いておいていただけると幸いです。
さて、次回からは本格的に「年末調整」についてご説明させていただきます。
自分から学んで動かないとお金は減る一方ですので、ぜひお目通しください。
※上記の内容は、平成26年10月26日時点の法律に則って記載しております。
関連記事
-
地震保険を一括で支払うと控除が受けられるのは最初の年だけ?
さて、11月も半ばに入りまして、今年も残すところ一ヶ月半ですね。 前回は「競馬で勝ったら確定申
-
更正の請求ってなあに?
さて、前回は「修正申告」について書かせていただきました。 今回は逆パターン、「更正の請求」につ
-
平成27年(2015年)に施行される税制《相続税の基礎控除編》
さて、前回に引き続き、平成27年から施行される税制をひとつずつ見ていきたいと思います。 まずは
-
船を買って節税できるの?
さて、年初早々にバブリーな質問をいただきましたので、書かせていただきます。 船を買って節税なん
-
平成27年度税制改正大綱 《NISAの限度額引き上げ》
さて、平成27年度の税制改正について書いていきます。 NISAの限度額が上がり
-
年末調整で提出し忘れたらどうすればいいの?《保険料控除証明書編》
前々回は「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」を提出し忘れた場合について
-
年末調整で確認しよう!~扶養家族2~
さて、前回は「扶養」について少し触れました。 今回はその続きで前回記載した4つの要件を1つずつ
-
平成27年度税制改正大綱 《住宅取得等資金の贈与》
今回の改正大綱は贈与関係が目立っている気がします。 その中のひとつ、住宅資金援助の贈与について
-
平成27年度税制改正大綱 《結婚・子育て資金の一括贈与に関する非課税措置》
さて、今回は新しく実施される予定の税制について書かせていただきます。 結婚・子
- PREV
- 年収103万円と年収130万円はどちらがお得?
- NEXT
- 年末調整で確認しよう!~扶養家族1~